<転機のサウジ>(上) 若き副皇太子に権力集中 脱・石油依存へ開国

Logo.jpg
 日本経済新聞  2016/06/22(水)

 中東の石油大国サウジアラビアが転機を迎えている。代々、高齢の国王が国を率いてきた厳格なイスラム教国で、ムハンマド副皇太子(30)が突如として実権を掌握。原油価格が低迷し、国を取り巻く状況が変わる中、国を開き「脱・石油」を目指す大規模な改革を打ち出した。若き指導者の荒療治は国内外に波紋を広げている。

「MbS」に一目

hukuouzi.jpg ビジネスマンから外交官、王族まで一目会おうと長い列を作る。ムハンマド・ビン・サルマン。英語の頭文字から「MbS」とも呼ばれる副皇太子はサウジの石油政策や経済、国防、外交の幅広い分野で決定を下す。


 サウジで進む異例の権力集中。2015年1月に即位したサルマン国王は、お気に入りの息子で国防相のムハンマド王子を王位継承第2位の副皇太子に抜てきした。実権を持たせ、閣僚を副皇太子に近いとされる人物で固めた。


 その副皇太子が4月に打ち出したのが経済改革構想「ビジョン2030」だ。マッキンゼー・アンド・カンパニーが15年末にまとめた報告書が下敷きになったとされる。「我々は原油依存症に陥っている」。国営石油会社サウジアラムコの上場を利用して投資収益を稼ぎ、石油に代わる産業をつくる青写真を描く。

 既にサウジの政府系ファンドは米配車サービス最大手ウーバーテクノロジーズに35億ドル(約3700億円)を出資。民間企業への出資規模としては過去最大だという。



改革に反発も

 年10兆円超流れ込むオイルマネー頼みのサウジの国家統治に限界が見えてきたのは確かだ。原油安で15年に10兆円規模の赤字を計上。国際通貨基金(IMF)から外貨準備が5年で尽きると警告された。所得税がなく、医療や教育がタダという大盤振る舞いを続ける余裕は細る。

 石油依存の副作用で産業が乏しく、増え続ける労働人口を吸収できていない。国民の約6割を占める30歳以下の失業率は20~30%ともいわれる。働き口をつくらなければ、国内に根を張るイスラム過激派が受け皿になる。


 11年の民主化運動「アラブの春」では、改革を求める民衆の力で同盟国エジプトの体制があっさりと転覆する現実を目の当たりにした。税導入などで痛みを強いられれば不満が広がりかねない。ビジョンでは宗教上制限されがちな娯楽やスポーツの振興も盛り込んだ。


 急進的な改革には反発も予想される。サウジの宗教指導者は4月、副皇太子が理解を示した女性の自動車運転の解禁を「許されない」と断じた。女性の投票権・参政権は15年末の自治評議会(地方議会)選で認められたばかり。女性の労働参加の実現は容易ではない。


 メッカとメディナの二大聖地の守護者としての王室の正統性に疑問を向けられる可能性もある。ロイター通信によると、副皇太子はビジョンに関する記者会見を終えた直後、隣室で宗教指導者らに会い「(改革は)行きすぎないようにしたい」と話したという。

 「20年には石油なしでも生き残る」。若きリーダーが求める変化は、体制を揺るがしかねない危険な賭けでもある。


bardgif.gif||

アクセスの多かった記事(昨日)