中国インフラ輸出難航 米・欧・アジアでトラブル相次ぐ 安値受注の無理露呈

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 日本経済新聞  2016/06/22(月)

【北京=阿部哲也】中国の習近平指導部が進めるインフラ輸出が難航している。先進国初の案件として注目を集めていた米西部の高速鉄道事業が合弁解消に追い込まれた。計画が遅延したことに加え、米当局が事業認可に難色を示したためだ。アジアや中南米でも同様のトラブルが相次いでおり、海外進出を成長の柱に据える国家戦略に影が差し始めた。

infurayusyutu.jpg 頓挫したのは、ロサンゼルスとラスベガスを結ぶ約370キロメートルの高速鉄道プロジェクトだ。「貴社では適時かつ効果的な事業遂行は難しい」。6月上旬、事業を主導していた鉄道建設大手、中国鉄路総公司に対し、合弁相手の地元企業エクスプレス・ウエストが提携解消を伝えてきた。


 総額127億ドル(約1兆3200億円)を投じ、中国製の鉄道設備と車両を導入する計画だった。運営も含めて中国側が全面参加する段取りだったが、融資取り付けや事業計画の策定でもめ、9月に予定していた着工が絶望的になっていた。「中国製の高速鉄道は受け入れられない」。関係者によると、米当局の強い反対もあったという。

 同事業は昨年9月の習氏の訪米にあわせて締結した米中協力の目玉案件だ。「全くの誤りで、無責任極まりない」。中国鉄路は緊急声明を出し、法的措置も含めた厳しい対応をにじませた。ウエスト社はあくまで新たな提携先を募るとしており、米中間の企業紛争に発展する恐れも出てきた。


 今年3月にはタイで計画していた長距離鉄道事業の大幅縮小を迫られた。融資や建設費を巡ってタイ政府と折り合えなかったためだ。ベネズエラでは12年に完成するはずだった高速鉄道事業が滞り、建設現場が放置されたままだという。日本企業から勝ち取ったインドネシアの高速鉄道は書類の不備や保証を巡り紛糾し、計画は遅れ気味だ。


 最初のつまずきは14年末に表面化したメキシコの高速鉄道事業を巡る破談劇だ。鉄道建設大手の中国鉄建が受注を決めたが、メキシコ政府が「入札の透明性を確保するため」として契約を突然取り消した。中国勢と組んだ地元企業が大統領夫人らに豪邸を贈った贈収賄の疑いも発覚し、事業は無期延期となった。


 中国勢はアフリカなどの発展途上国や東欧を中心に、鉄道敷設や貨物車両などの受注を急拡大してきた。高度な技術が不要で、規模のメリットを生かせたためだ。トルコでは中高速鉄道を建設した実績もある。


 自信を付けた中国勢は日欧米大手の技術支援を受けて「自主開発」したとする車両や設備の輸出拡大を目指した。高速鉄道の場合、先進国勢の2分の1から3分の1の低コストで建設・整備が可能とされる。だが技術力のある先進国勢と真っ向から競い合う先進分野では、安値受注の無理が露呈し始めた形だ。


 鉄道以外でもトラブルは多い。スリランカでは中国主導の港湾整備が地元の反対で難航する。ミャンマーでは同様に水力発電用の大型ダム建設が凍結に追い込まれた。多くは中国側のずさんな対応や事業資金を巡るいさかいが原因だ。

 習指導部は「一帯一路(新シルクロード)」構想を看板政策に掲げ、中国から欧州へと至る地域でインフラ整備を主導することを狙う。過剰生産が問題になっている鉄やセメントの輸出拡大につなげる思惑だ。

 だが中国の台頭を警戒する日本なども同地域での経済外交を強めている。度重なる失敗で印象が悪化すれば、肝心の国家戦略に黄信号がともりかねない。




アジア投資銀迫力欠く 25日から年次総会、融資目標控えめ


 【北京=原田逸策】中国のインフラ輸出を後押しする役割を担うのが、中国主導で1月に開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)だ。だが、出足は慎重でやや力不足の感も否めない。


 AIIBは25、26日に初の年次総会を北京で開く。第1号融資案件として4件程度を公表する見通しだ。

 パキスタンの高速道路にはアジア開発銀行(ADB)と、タジキスタンの高速道路には欧州復興開発銀行(EBRD)と協調融資することを内定。単独でバングラデシュの案件に融資することも検討している。パキスタンは中国が外交面で重視し、タジキスタンは「一帯一路(新シルクロード)」構想の沿線国で、案件選定にも中国の影響がうかがえる。


 今のところ融資姿勢は手堅い。ADBとの協調融資ではいったんADBにお金を預けてADBがまとめて融資する。対象も政府案件が中心で民間主体の案件には手を出していないとされる。


 2016年の融資目標も計12億ドル(約1200億円)と控えめだ。まずは中国が国際機関を運営できると示すことを重視し、融資の焦げ付きが相次ぐような事態を避ける狙いとみられる。


 「一帯一路」関連では、14年末に中国が設立した「シルクロード基金」も迷走気味だ。中国企業によるイタリアのタイヤメーカー買収や中国銀行傘下の航空機リース会社の株式上場など一帯一路と関係が薄い投資も多い。投資利回りなどの条件を課しているとされ、案件探しに苦労しているとみられる。


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